武奈ヶ岳山頂/

山行日
2009年10月13日(火) 〜15日(木)
天候
晴れ
コース
13日:6:20京田辺⇒10:45飛騨市古川散策⇒16:30高山朴の木平(泊)⇒14日:宿舎6:45⇒殿下平総合交流ターミナル・五色ヶ原案内センター7:45⇒16:00出会い小屋⇒16:30案内センター⇒17:30乗鞍高原(泊)15日:宿舎8:00⇒トレッキング⇒19:00京田辺
参加者
リーダー:北川   サブリーダー:山口・守口
男性:弓仲・倉光・村田 
女性:加藤・藤富・吉津・新居
合計:10名


    山行報告  北川 欽造
  最初は15人で現地予約を入れ、参加者募集を行ったが、結果的に10人になったので守口さんと小生の車で行くことになった。一週間ほど前からやはり心配なのはお天気具合だ。出発前日も現地では曇りときどき晴との予想。まあ雨が降らなければ良しとすべきだ。しかし1300〜1600余m標高の山間部では雨の心配は当り前だ。
 高山市は有名で誰でもご存知だから、よりマイナー的な古川を散策に選んだ。16世紀末頃より城下町として栄え、飛騨の中心的な存在でその当時の町並みが良く保存され、造り酒屋が軒を連ね、杉玉が下がり、新酒の香りが小径に漂っている。古刹円光寺を訪ね、まつり会館に立ち寄り、小川の流に鯉がたわむれ遊ぶ。屋台蔵、和ろうそくの店、漬物・黒豆茶の店、生味噌のお店……長い歴史と伝統が随所に生きている。昼食は飛騨牛シャブシャブコースで満腹する。
 五色ケ原では、一週間前に入山者の登録をし、地元の公認ガイド無しでは入山出来ない。案内センター嬢の親切な対応は、自然を守る姿勢がまざまざと伝わる。二つあるコースの内、カモシカコースを選んでおいた。数々の滝と樹林帯の起伏に富んだ変化コースだ。全長はたったの6.7kmなのに7時間余もかけてガイドの解説を聞きながら辿る。滝の轟音を聞き、清流にはイワナが泳ぎ、針葉樹の巨木、紅黄葉のトンネル、やどり木や熊棚の見上げ、岩かげのヒカリゴケを観察する。一合升が置かれた水場がタイムリーに現れる。湧出する地下水の鮮烈な冷たさとおいしさ。
 熊にもカモシカにも出逢わなかったが、彼等が遊び、闊歩する聖域に恐れ多くもトレッキングを続ける。そして柱状節理の岩壁を見上げ、次々現れる個性ある滝のマイナス・イオンを浴びる。春にはサワグルミの林床にニリンソウが見事な群落をつくるそうだ。
 コースのほぼ中間地点には烏帽子小屋があり昼食をとる。近くの沢で水力発電され、快適なエコのトイレはすばらしかった。秘境五色ケ原は動植物の生態系、原始の佇まい、地質学、自然環境の保全を学ぶ上で世々代々残したい貴重な聖地だった。コース終点の出会い小屋では冷たく冷えたトマトのサービス付だった。
 最終日の三日目は乗鞍高原の散策だ。縦横に歩ける数多くのコースでは、守口さん立案のルートをとる。滝見台から善五郎の滝を見おろし、そして滝の飛沫に近づく。そして池巡り。池や滝、樹林、草原…… あらゆる脇役を従え、乗鞍岳がどこからでも展望出来る。せせらぎの袂では随所で写生に余念のない人たち。快晴のもと、ほとんど無風状態の中で気持良さそうだ。紅いカエデやヤマブドウ、黄緑色のコシアブラ、シラカベ、未だ緑を残すカラマツ……秋が深まってゆく。炭焼きの煙が立ち登り、郷愁と旅情がかきたてられる。飽きない景色の連続だ。立ち寄り湯・湯けむり館で温泉に浸り、最後は盛りソバで仕上げた。
 心配とは裏腹に三日間ほとんど快晴に恵まれ、五色ケ原では公認インストラクターの親切で興味ある解説を聞き、三日間も温泉に浸かれた心地良さだった。のんびり山行(山でないかも知れない)で山友会らしくないかも知れないが、たまにはこんな例会もいいなァと思った。
 今回も山口さん、守口さんの良き適切なアドバイスに助けられ、吉津さん、加藤さんの名会計役に世話になりました。楽しく旅を成功出来たご協力を参加者皆様に心より御礼申しあげます。

ヒヤリハット       な し






古川町を散策/
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円光寺の鐘楼/

立ち寄った古いロウソク屋さん/
 

杉玉の有る造酒屋/

五色が原これから出発/
 

五色が原カモシカコース /

一日が終りました/
 

乗鞍高原善五郎の滝と乗鞍岳 /

乗鞍高原の黄葉 /
 

乗鞍高原の黄葉 /

乗鞍岳をバックに/
 

乗鞍高原/
「写真提供は山口さん」

    乗鞍   くらり・・・  倉光 正己  

 1.はじめに
 「かんなび」の案内を見たとき私は迷った。私はまだ乗鞍に登っていない。あまり歩かずに頂上へ行けることは知っているし、先日その頂上付近に熊が迷い出たことも聞いている。でもその麓に「五色ヶ原」なんていう所があることは知らなかった。そこだけで2泊3日。なんだか大名旅行だナ、と思ったのである。Yさんに誘われ、Kリーダーから電話があって決心がついた。日本唯一の「有料・ガイドつきトレッキング」を経験してみるのも面白そうだ。参加を申し込んだ。
 帰り際、Kリーダーが何気なくおっしゃった。「感想文書いてくれる?」みなが書くみたいな調子だったので、「いいですよ」と答えると、「これで決まった」と。当方「???」。仕方がない。

2.古川のローソクと鐘
 初日、「行きがけの駄賃」というやつで、古川に寄る。有名な飛騨高山から2つほど北寄りの町である。ここには20年以上前、寄ったことがあった。寂れた、しかし興味深い町だった。次の機会に女房を連れてきた時には、かなり整備されていた。そして、この2度目とどっちが前だったのか、タイトルも覚えていないがNHKの朝ドラの舞台となって、一気に「全国区」の名所になってしまった。今回寄ってみると、きれいに整備されすぎている。古い建物がしゃれた店になっている。水路の鯉は、観光客が多いのでエサのもらいすぎか、メタボである。ドラマの舞台にもなった和蝋燭屋さんに寄る。初めて来たときのご主人は亡くなられ、息子さんが6代目を継いでいらっしゃるが、もう立派に貫禄がついている。その昔、ご主人にいろいろ聞いた。そもそものローソク作りの目的は、近くのお寺で説教のあるとき燈す大蝋燭を納めるためだったと。手でハゼの蝋を塗り重ねていくので、バウムクーヘンみたいな構造になる。和蝋燭は風で消えにくいのだそうな。そのお寺にも寄ってみた。親鸞さんの大立像がある。北陸に門徒衆が多いのは知っていたが、飛騨もそうなのか。山陰のわが家もそうだ。大きな立派な鐘楼がある。でもなんだか奇妙だ。よく観察すると鐘が鐘楼と不釣合いに小さい。それで撞木に手が届かないのか、鐘突き用に中2階の足場が作られている。さては、と気がついて、鐘楼に登って鐘の銘を見る。昭和22年とある。やっぱり! こういうことだろう。戦時中、資源不足で「金属回収令」なるものが出された。鐘も文化財指定以外の江戸時代以後のものはすべて供出させられた。多分この寺の大鐘もそうして消えてしまったのだ。戦後すぐ復活させたものの、時代もあり元のような大きい鐘は作れなかった、ということだろう。残酷物語である。
 「まつり会館」でみた飛騨の匠が腕を振るった「祭屋台」は見事だった。春の祭りを見てみたい。Kリーダーのお世話で食べた昼食の飛騨牛はおいしかった。やっぱり、大名旅行だ…。

3.五色ヶ原トレッキング
 ほうのき平の「宿難(すくな)の湯」に宿泊。「宿難」というのは日本書記によれば、このあたりに出現した二面四臂の神様だそうだ。最近評判の三面六臂のハンサム・阿修羅や千手観音は仏教由来だが、こういう異形のものを思いつき敬うのは、人類共通の発想なのだろうか。ここから安房トンネル方向へ10分ほど走ると、右手に五色ヶ原の入口センターがある。いままで何度かこのコースは車で走ったが、気がつかなかった。今年で開設以来6シーズン目だそうだから、一番最近走ったのがそれ以前ということもありうる。どこかで聞いたような「西下さん」というガイドさんがきまり、注意事項があって出発する。弁当、ガイドブックつきである。二つコースがある。今日の「カモシカコース」と称するコースは滝が見もののようだ。何百万年かの昔、乗鞍の噴火による溶岩が作った地形らしい。森林帯の中の幾つかの谷を、尾根を廻ってめぐっていくという感じである。だからそれほどの高低差はない。谷はすべて絶壁で行き止まりであり、そこに滝がかかる。「こちら側から乗鞍に登れるんですか?」とガイドさんに尋ねたら、下りコースを尾根筋に2箇所ほど作ったけど、それも険しくてあまり使われない、とのこと。冬場には滝も凍りつくらしい。それが青く見えるので「青垂(アオダレ)の滝」と名づけられたものもあった。今年の紅葉はもう一つ、ということで、去年見た東北の山の紅葉とは比較にならなかったが、絶壁に生えた木々の紅葉とそこにかかる滝の組み合わせは見事だった。樹木や花の名をガイドさんが教えてくださる。一番印象的だったのは木の上の枯れ枝の寄せ集め。鳥の巣かと思ったら「熊座」というものだそうな。熊はコシアブラやヤマボウシなどの小さな木の実が好きなのだそうだ。木の攀じ登り、座布団を作って座り込んで食べるらしい。怖くもあるが、一度見てみたいものだ。

4.ガイド付きトレッキングの評価
 折角だからこのコースの評価をやってみたいのだが、これが難しい。パンフレットには「…希少価値の高い日本最後の自然景観として、高く評価されていると共に後世に残すべき大切な資源です」と謳われている。美しい雑木林と滝である。しかし、ここでしか見られない珍しい景色でもない。時々、大木もあるが、数十年レベルの木が多いことで分かるように、人間の手の入った林である。この近くには戦時中まで鉱山があったという。そのための炭を焼いた窯跡も残っていた。里山扱いだったようだ。鉱山のための水量電気施設跡というコンクリートの遺物もある。
 有料化は観光客が多すぎる(オーバー・ユースという)ことを避けるのが目的である。しかし、有料化して客が減りすぎると、管理費など経営的に成り立たないから困る。この兼ね合いがむずかしい。今回、お一人様8,800円也。お金を払う我々の立場から言えば、安いに越したことはない。いまもここ以外、山はタダである。我々はずっと、それで当然と思い込んできた。しかし、それでは山がもたなくなってきているのも確かであろう。しかるべき料金を利用者が払い、その分、登山道やらトイレの管理はしっかりやってもらう、という方向に行かざるを得ないと私は思う。入山制限、有料化を模索する他の観光地からの見学も多いそうだが、まだ先進的な成功例とは言えないと思う。ニュージーランドのトレッキング・ルート(ここは高料金であるが見事に成功している。参考資料:09年10月、寺澤「まなぼうよ」、06年3~5月、倉光など、「かんなび」バックナンバーにも多数)のようにできるかどうか、まだ課題は多いと思う。

5.乗鞍高原
 乗鞍温泉に泊まって、3日目は高原の散策コースを二つ歩いた。乗鞍の頂上部がよく見える。長い稜線だが、御嶽と違い中央部がガクンと凹んでいる。それがお尻をのせる「鞍」型に見えて、「乗鞍」の名前になったらしい。「善五郎の滝」の説明が面白かった。400万年前の噴火でできた溶岩台地上の滝だそうだ。滝はいまも後退している。橋の下流の深い渕は昔の滝壺である、と書いてある。気になってきて、計算してみた。400万年÷40m(滝から渕までの距離の概算)=1000年/1cm。滝全体が1センチ後退するのに数百年。これは早いのか遅いのか? サワラ林がある。サワラとヒノキの見分け方が書いてある。葉の裏の白い模様がサワラはV、ヒノキはY。皆が葉をむしってみるが、どの木もVで比較のしようがない。皆があきらめた頃、私は林から大分離れたちょっと雰囲気の違う木に気がついた。葉をむしってみると見事Y。執念?の確認だった。
 大名行列だからノラリクラリというわけでもないが、ノンビリしたトレッキングもいいものだ。でも、車を運転のKリーダーとMさんは大名どころではなかったろう。ありがとうございました。