/小塩山/

山行日
2007年4月1日
天候
くもり、黄砂多し
コース
京田辺7:20⇒8:30大原野神社PA⇒花の寺・小塩山⇒12:10金蔵寺⇒大原野神社13:10⇒14:10京田辺
参加者
リーダー:佐々木  サブリーダー:濱北 
男性:北川・片山・寺澤・宮野・徳田・佐々木
女性:山田・濱北・堀尾・徳田・伊丹・上田
合計:12名    

 

    山行報告  佐々木 英夫
/例会で大原野の里を訪ねた。気候はよかったが、黄砂が飛び交い、どんよりとした日だった。 花の満開には程遠く、小塩山のふもとの里は静寂の佇まいを見せていた、  

 大原野神社は藤原氏が平安遷都のおりに奈良の春日神社を勧請したといわれ、多くの人々に 崇拝されたらしいが、時代と共に寂れ、今は、ひっそりと集落の祭神として小塩の麓の森にた たずんでいた。  

 この里には、西行をはじめ、在原業平や、朝廷のゆかりの地として多くの歌が残っていて、 いにしえの繁栄が偲ばれる。

    大原や 小塩の山も今日こそは 神代のことも思いづらめ     業平  

 大原野神社に参拝を済ませ、花の寺(勝持寺)へ鬱蒼とした樹間の古い敷石の参道を登り、これも古びた白壁に囲まれた階段を上がれば、西行が隠棲したといわれる勝持寺の山門があっ た。訪れる人も少ないこの時節は入門が出来なかったのであきらめて、小塩山に向かった。  

 この寺はサクラの名所として、西行桜の能の舞台として、登場している。   
能のことは不案内だが、シテが桜の精でワキが西行ということで、人々がこぞって花の寺を訪れ、その喧騒を迷惑に感じた西行が桜の罪だと、詠んだ歌 しづかならんと思いける頃、花見に人々詣で来たりば、

    花見にと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の (とが)にはありける   西行  

 と詠んだ。  
 夜、西行のもとに桜の老木の精が現れ、一生懸命に無心に咲いている桜花に罪はない、  『あたら桜の (とが) 』するとはつれませんね、と恨みを述べるというストーリーらしい。

  西行は漂泊の花の歌人とも言われ、花鳥風月の自然と、虚空なる心を読んだ歌が多い。 参道周囲の桜は老木で高く、雑木、竹が多く混在し、往時の姿はこんなものではないのだろうと 思った、花の頃は寺が桜で埋まるほどの美しさだったといい、太平記には佐々木道誉が前代未聞の豪華な花見の宴を張った所として登場している。   

    世のなかに絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし   業平

 世の中に桜の花がなかったら、人々の心はのどかに過ごすことが出来ないだろうということらしいのが綺麗な解釈で、本当のところは、花見の宴で酒を呑み料理を食する楽しみを逃すと一年中すっきりしないことを言っているのではないだろうかと思う。桜に託けて宴を開く習慣は昔から春の行事として人々の楽しみの一つであったのだろう。

 参道を出て左に道をとる。小塩への道は三ケ所ほどで車道に接し、ところどころの展望は、京都市街や、釈迦山の山腹に建つ吉峰寺などが見わたせた。参加者の1人が体調の不調を訴えたため、道案内を浜北さんに託し、大原野まで一緒に下山した。ちょうど大原野神社の子供神輿が、鳴り物入りで多くの人々が行列を連ね境内に入るところだった。

 それから金蔵寺まで車で行き、休息し元気になった参加者を車に残し、小塩を目指した。山頂はアンテナ建設用地に占領されていて、頂という感じがしない。皆はちょうど昼食をしているとこ ろだった。カタクリは固い蕾であったらしい。山城三十山の『千頭ヶ岳』の山頂は鉄塔とフェンスに占領されていたことを思い出す。

 金蔵寺へ至る西山を下った。東海自然歩道はよく整備されていて、樹木は樹名板で説明されていて楽しい。


      小塩山・金蔵寺山門   「写真提供は寺澤さん」

 金蔵寺の屋根が俯瞰さて20分ほどで、山腹を造成し段々に石垣を積み重ねた敷地に金蔵寺は建立されていた。正午の知らせだろう。金蔵寺の鐘が麓から聞こえてきた。この寺の再興 をしたという柱昌院の墓所から本堂を経て山門に下った。

 金蔵寺は、説によれば養老二年、隆豊禅師が元正天皇の勅願により建立され、のち聖武天皇が金蔵寺と命名し、西の神山として繁栄したという。その後、時代の戦火に消滅したが徳川綱吉のご母堂柱昌院により再建されて現在に至っているという。

 山門には愛宕権現と書かれた石柱が建ち、境内に点在する岩座が当時のご神体なのかも知れない。門前は車道に接しており、西は吉峰寺道、東に下れば花の寺に通じる。洛西の街が段々の田畑の向うに開けていた。振り返ると、小塩山の麓に張り付くように人家が点在し、桜の花が競って咲き誇った風景は、絵に描きたい気がした。ふたたび訪れる日を待ち遠しく思いながら帰京した。

  金蔵の 鐘の()聞きし  爛漫(らんまん)の 桜花の栄華 今にあらじて    ひでを


ヒヤリハット  体調不良あり