南アルプス

  2591m  3013m


聖岳山頂/

 山行日  2006年8月22〜26日
天候
   曇り 晴れ 雨
 コース
23日:便ヶ島3:50⇒易老渡登山口4:20⇒10:20易老岳⇒14:05光小屋:24日4:30⇒光岳5:30⇒光小屋7:00⇒易老岳10:20⇒15:30茶臼小屋:25日4:30⇒上河内岳7:00⇒9:35聖平小屋⇒12:50聖岳⇒15:30聖平小屋:26日5:00⇒9:20便ヶ島
 参加者
リーダー:山口  サブリーダー:金本 
男性:秋月、北川、倉光、田中、守口
女性:大谷、倉光、澤田
合計:10名    


    山行報告  山口 博
 山行報告 今年の夏山は雨に祟られ7月に日本百名山6山を予定していたが、登れたのは2山で縦走の水晶岳・鷲羽岳・黒部五郎岳は暴風雨で爺が岳の手前で登頂を断念し、又飯豊山も切会小屋で飯豊山を目前にしてこれも登頂を断念し、消化不良の今年の夏山登山であった。夏山放射登山の剱岳を予定していたがこれも都合が悪くなり参加できず、最後の光岳・聖岳に望みを繋いだ。 サブリーダーの西上さんが直前体調不良で参加出来なくなり、参加者も当初より4名減り10名となりました。今回は時間の余裕を見て小屋4泊で、展望を楽しむことが出来ました。

8月22日(火)
  新田辺10:00−松井が丘10:15−養老SA11:50(昼食)12:30−飯田IC14:20―矢筈トンネル15:10
  −土砂崩れ現場1640(歩行)―光聖小屋19:00
  今日は夕方に小屋に着けばよいので10時に出発した。今夜は小屋泊まりなのでバスに積み込んだビールを飲みながらの道中で明日からの英気を養う。林道入ると落石があり突然目の前が土砂崩れで通れない。バスを降り林道を歩くことになった。 2時間ぐらい前に降った豪雨で土砂が流れたらしい。しばらく歩くと発電所が見え易老渡まで8`の看板がある。まさかこんな事になるとは、先月の有峰林道20`林道歩きを思い出した。 直ぐに復旧工事で道路も開通したので、あと半時間遅ければ通れたのに全く憑いていない。 聖光小屋には7時に到着した。小屋のオーナーも私たちが来られないと思っていたとの事。 光聖小屋は2年前に出来た新しい小屋で風呂もあり明日からの縦走に備えて9時に就寝する。

8月23日(水)  
  聖光小屋3:50−易老渡登山口4:20−面平6:20(朝食)6:50−易老岳10:20−三吉ガレ11:50(昼食
  12:15−光小屋14:05
  今日は縦走では一番キツイ登り(累計標高差2,100mで登り1,900m)なので朝早く出発した。登山口からはいきなり急登で気温も高く、直ぐに汗が噴出してくる。ゆっくりとしたペースで25分歩き5分の休憩を守りながら登る。縦走でテント泊の共同装備で皆のザックも重く、初めて体験する重量の人もいて苦しそうだ。 2時間で面平に着き朝食にする。易老岳は1時間半の予定で此処までは急な登りが続く、30分の休憩の後易老岳に向けて出発した。みんな朝食で元気を取り戻した様だ。予定の時間の10:20に易老岳に到着した。此処は聖岳への従走路の分岐点で明日此処まで引き返して聖岳に登ることになる。光岳へはしばらく下り樹林帯を抜けて三吉平を過ぎると登りに成る。 ここからの登りも長い、水場出て光小屋ももう直ぐだが水は涸れていて1滴も出ない。周りにはトリカブトの群生で紫色の花が咲き乱れる、こんなに沢山のトリカブトを見るのは初めて。やっと前方に光小屋が現れ14:05に着いた、予定よりずいぶん早い到着だ。 3時までに到着して安心して受付に、「なんと団体は食事できません」うそ!団体でも3時までに到着すれば3名は泊まれますと聞いたが何なのか?頑張って登って来たのに。「素泊まり今日は他に団体が無いので何人でも泊まれます」昨日は団体3組で70人(定員45人)が泊まったとの事。 4名はテントで6名宿泊し食事は持参の食料を夫々に出して夕食にする。ガスで展望も無いので今日の光岳の登頂は止めて、明日ご来光を光岳の頂上で迎えることにする。

8月24日(木)  
 光小屋4:40−光岳5:00−光小屋6:00(朝食)7:00−イザルヶ岳7:20―7:40−三吉平9:30−易老岳
  10:15(休憩)   10:30−11:50(昼食)12:40−希望峰13:15−仁田岳13:30−希望峰14:00−茶臼岳
   14:50−茶臼小屋15:30
 4:40光小屋出発し光岳頂上5:00着。曇りでご来光も無く暫く待ったが晴れず下山し、持参の食料で朝食を済ませ7:00に出発した。イザルヶ岳に立ち寄りやっとガスが晴れて展望が見えた、苦労して登って来た事が報われた。時間の余裕もあり仁田岳にも登り茶臼小屋には15:30に到着しました。茶臼小屋の夕食は豪華でマグロの造りが付いているのには吃驚した、野菜の具沢山のスープも美味い。従業員も実に親切で気持ちが良くレストランでの食事の気分。 テントは金本さんと私だけで2張り張り6時からテントに入り就寝。

8月25日(金)  
 茶臼小屋4;30−上河内岳分岐6:40−上河内岳6;50−7:00−上河内岳分岐7:10(朝食)7:35−聖
 平小屋   9:35(休憩)10:05―小聖岳11:40−聖岳12:50(昼食)13:40―聖平小屋15:30  
  茶臼小屋を4:30に出発した、今日は素晴らしい天気で南アルプスの展望が楽しめそうだ。 上河内岳分岐に6:40に到着し、荷物を置いて上河内岳に登った。眼前に聖岳の勇姿が左後に兎岳が覗き右前方には赤石岳からの南アルプスの峰が連なり雄大だ。今回の縦走では一番の展望であった。分岐に戻り朝食をすませ聖平小屋には9:35に到着した。緑茶と手つくりのクッキーで出迎えて呉れる。山小屋もずいぶん変わった。茶臼小屋、聖平小屋は静岡県営で観光協会が運営している様です。セルフサービスで泊めてやっている態度の山小屋とずいぶん違う。  荷物を置いて聖岳に、頂上には12:50に到着した。午後はガスが出て展望がなく、奥聖岳まで行きたいとの声もあったが、雷と雨が心配で諦めて下山する。下山の途中で雨が降り出した。金本さんと2人テントの予定を取りやめて小屋泊まりにする。

8月26日(土)  
  朝食4:30-出発5:00−薊畑分岐5:30−中間点7:40−西沢渡9:15(休憩)9:30−聖光小屋10:20−発
  11:10−遠山郷12:30(入浴・昼山食)14:10−飯田IC14:30−京田辺19:00
  小屋で朝食を済ませて5時に出発した。朝早くから朝食を作って呉れるのは有り難い。 薊畑分岐までは昨日登った聖岳への登りで30分、ここからは1,500mを便ヶ島まで下る。 西沢渡までは急な下りが続きすべり易い。2時間半で中間点に到着した。所々に滑り注意の標識が立っている。ザレ場にはロープが有り慎重に下る。突然後を歩いていたKさんが転倒した。 アッ!という声に振り向くと仰向けになり頭を下に真逆さまに、とっさに出した右手にKさんの左足の足首が掛かった。転落すれば20mぐらいすべり下の木に激突するところであった。西沢渡で初めて野猿に乗り川を渡り後は平坦な道を歩き10;20に便ヶ島に着きました。皆さんのご協力のお陰で、全員無事に下山出来て良かったです。ありがとう御座いました。

<ヒヤリハット>  
  最後の下りのガレ場でKさんが転倒し仰向けに真逆さまに転んだ。幸い私が咄嗟に右足首をつかんで止まったが、足元が悪く私も一緒に滑りかけたが細い木の根元に足が架かり止った。 後続のAさんが右手でロープを掴み左手でKさんのザックを掴んだが、Kさんは仰向きで万歳の形でどうすることも出来ない。TさんMさんが横に回り下からKさんを支えやっと腹ばいに し、Kさんも身体の自由を取り戻した。昨夜食事の前に管理人の原田さんから「下山の事故が70%で注意するよう」にと話があったが、正に事故は下山の最後の場所で起こった。 縦走の疲れと下山の最後で気の緩みがあったのではと思います。  



大雨で荒れた登山道
  聖岳山頂近くのトリカブトの群生地
反省会

 

[反省会リーダーをほったらかして先に行くとは!]
○リーダーを無視して先に行ってしまうとは何事か。/
今日は崖崩れもおきておりチームで動く事の重要さを
認識 して欲しい。
○登山は命がかかっている、リーダーは全体を把握し
なければならないのに、自分だけ良かったらというの
は とんでも無い事だ。
○リーダーがしっかり注意・指示するようにしよう。
最近リーダーは少し遠慮的になっているような気がす
る。(リーダーだけの問題なのかベテラン的な人の認
識は・・・)

こんな話し合いが行われたが、その場だけで終わらず/
いつも肝に銘じて責任ある行動をお互いに自覚しよう。

/

 

  立ち枯れ

 茶臼岳の手前

                                                  [写真(文)提供は秋月さん]
 



 感想                光岳・聖岳アルプス紀行                 北川 欽造
 この夏は例年になく大型山行が目白押しだった。大方の諸般の事情が、この山行に向けての条件が整ったので、飯豊・朝日連峰に続きもう一度この夏山山行への参加をさせてもらった。参加 申込みの〆切は当然すんでいたが、山口さんがまだ人数の余裕がありますとの事で、仲間に入 れてもらったのだったエ,それにしても今夏は梅雨がいつまでも長引き、天候の不順続きで開放的な好天の夏山日和が少なかったようだ。やはり天気を気にしながら、欲目にも晴天の山行を期待 した。南アルプスでも人気の北部地域と違って登山者は少ないだろう。それだけに静かな山行を 期待する。  

  近年、林道やダム建設が進みそれが全国的に開発と自然破壊、環境悪化へとつながった。南ア ルプス南部地方はどうだろう。高速をでたチヤーターバスは、南アルプスの山懐深く分け入る。 遠山川の流れを逆のぼり、かなりの高低差で民家が、あるものは寄り集まり、あるものは散在す る。そして段々畑が耕されて、高原野菜が作られ夏の花が咲いている。高速を降りてからもかな り山奥深く分け入り、改めて南アルプスの奥深さが実感された。民家も消えくねくねと屈折する山道で崖崩れに出くわした。ここはどのあたりだろう、谷底はるか見下ろすと、まだ地図でしか見もしない易老渡に地形が似ているので、そうだと思い歩く事にした。これが大きい早合点だっ た。行けども行けども便ケ島広場の聖光小屋は遠い。途中出会った建設作業員に間くと、2時間以上も先のようだ。現在どこに居るかさえ地図上で分からなかった。最初のヒヤリハットだった。  

 水溜りの多い林道を川に沿って進行。対岸で轟音と共に崖崩れが発生した。長い雨期がつづき、 軟弱な崖で大木さえも薙ぎ倒されて、川面に突っ込んでいく。こちら側の左岸でも歩いている時にこのようにならないか、気を引き締めて進んだ。途中の駐車スペースでも数台の車が閉じ込め られていた。数時間の難行苦行の未、明2日目の登高地点、易老渡の橋に連した。もう30分間で小屋に着ける……と思ったら再び崖崩れの現場。4日後の帰る頃には道路は復旧しているように 折る。暗い森の中で発電所の照明が見え、やっと聖光小屋に連した。定員12人の小規模ながらも 設備が整った小屋は3年前の5月に主人の青木氏が新築された、銀行も相手にされなく、親戚中 回って資金の苦労をされたとか。風呂、夕食のあと、明日の3時半出発に備え早く休んだ。  

 2日目は予定通り星空のもと、易老渡の橋から登高開始する。未明の樹林帯の中、ジグザグの 急登を進む。モミやツガ、桧の大木そしてブナの原生林の中を面平に達した。南アルプス南部の 深い森林地帯の広大さを実感する。コーヒーを立てて、行動食を摂った。シラビソの樹林で再び 急登がつづく。湿りの中で倒木や林床の上に苔が豊かだ。7時間弱の登高で易老岳に達し、方向 を南西方向90に変え、光岳に向けコースを取る。明日はこの分岐から北東方面、茶臼岳へ取るが、樹木のくまはぎが目立つ。道も下りに転じた。湿地が現れ、コバイケソウが茂る。倒木帯になりその上で苔に混じり若木が育つ。  

  尾根径が開け三吉ガレに着いた。久々に展望が開けたが西の方の中央アルプスやシラビソ高原 はかすんで見えない。三吉平からは再び登りになる。涸いた谷筋を登る。滑りやすい岩の沢筋は 歩きづらいが、鮮やかな紫のトリカブトが大群落で渓を埋める。光小屋主の青木氏が倒木の難ぎな静高平を歩きやすく整備された、と案内書に書いてあった事をご本人に話すと「あれは大げさ に書かれているんだ」と言ってはにかまれた。明るく開けたセンジヶ原では木道が敷かれ、間も なく光小屋に着いた。今日は12時間もの行動だった。

 3日目は樹木が繁る光岳で曇り空のため展望は効かないが登頂を試してみた。再びセンジヶ原に戻り、空荷でイザルヶ岳に登る。また登りかと思ったが、すんなりと頂上に遠した。砂利に覆 われた広場の山頂で、天気も回復し富士山は望めなかったが、北東に聖岳が聳え、兎岳や上河内岳が同定できる。センジヶ原は亀甲状構造土が苔や草に覆われている。アースハンモックと言う そうな。(日本山岳会編新日本山岳誌)そう言えば先程のイザルヶ岳の砂利とガレと恩ったのも構造上の一種だろうか。再びトリカブト群落の中、涸れ沢を用心しつつ下り、三吉平から登りに転 じ昨日の易老岳に着いた。希望峰から仁田岳、茶臼岳へ高度を上げ東へ10分程下り茶臼小屋に到 着した。きれいな若い女将さんのてきぱきと気の効いた給仕で、山奥で思いがけない、ぶつ切りのサシミ、ソバ、コンソメ等の夕食は疲れた身にも大変おいしかった。  

 4日目。未明の空は美しい星空だ。冬の星座オリオンが南天にかっこよく君臨する。東には明 るい金星が光る。今日も好天が望めそう。お花畑の稜線を辿り、上河内岳の拓けた麓で朝食を摂 った。このあたりも亀甲状構造土が拡がっている。聖岳の眺望を楽しみながら、2時間余で今回 最後の投宿となる聖平小屋が眼下の樹林の垣間に見えた。山では見えてからが長くそして遠い。 聖平は大台ケ原の正木ヶ原を彷彿させられるような自然の絶妙だ。草原の中の倒木が好ましいオ ブジエで楽しい。小屋ではおいしい熱いお茶の接待で迎えられた。  

  予定より早く10時30分に今回のクライマックス聖岳へ登る。ぬかるんだ蘇畑分岐からすばら しいお花畑が続く。トウヤクリンドウ、ハリブキ、チシマキキョウ、イワイチョウ…その他いっ ぱい。中でもトリカブトはここでも一番みごとだ。砂礫と岩場のジグザグ道で高度をかせぐ。日本で最南の3000m峰へもうすぐ遠する。前衛峰の小聖岳からはガレ場のヤセ尾根を行く。左側は聖岳大崩壊地だ、目が眩む谷が眼下に刻まれている。午後1時前に最高峰3013mの前聖岳に着き 昼食を摂った。兎岳方面から秋田大学の若い男女のパーティーが着き、赤石岳に向かって気勢のアピール。供応するように遠雷が聞こえ、奥聖岳登頂はあきらめた。下山にかかり2時半頃から 雨が降り出した。小屋へは3時半に戻り計画より早く降りてきた。

 最終日、5日目は3時半起床。小雨で霧もでていた。ペットボトルに充分水を補給し、5時丁度に下山を開始。昨日の蘇畑分岐まで最後の登りは30分間。小尾根を過ぎシラビソの原生林の斜面にかかる。苔の原生林はすがすがしい。鬼岳を右に眺望が開け小休止をとる。急坂のジグザグが続く。3時間もの長い連続の急坂。この時今回2回目のヒヤリハット!左側の急斜面に左脚をと られた。先頭のリーダーの山口さんと脚同志が絡み合ったと思ったら、逆さの状態であお向きに 転倒し、木の根っこに掴まって転落を免れたが、頭部は下へ逆さの状態で身動きがとれない。足場は悪く動けば少しづつずり落ちる。数人でやっと引きずり上げてもらった。かすり傷だけで幸 い大事に至らなかったが、山中5日目ともなると案外疲れていたかも知れない。皆様にご迷惑と 心配をかけ心より深くおわびします。  

  急坂は原生林の中をまだまだ続く。遠山川の瀬音が近づき、造林小屋が現れたが、ほとんど使 われていない様子だった。坂道はここで終わった。川を見下ろす場所で休憩をとる。対岸への徒渉のかわりに鉄製の荷物渡し篭で右岸へ渡った。ちょっとした冒険気分だ。対岸に取りつけば水平歩道が沢沿いにくねくねと続く。森林軌道跡だろうと思ったが、後で聖光小屋の主人に聞けばやはりそうだった。軌道跡を1時間弱で便ヶ島広場へ戻ってきた。聖光小屋着は10時30分で、 今回も長い山行は終わった。食物と水とが大変大切な物であり、ヒヤリハットがないように充分な注意を払わねばと思った山旅だった。今回の件を心よりお詫び申し上げ感謝申し上げ、今後と もよろしくお付き合いの程お願い致します。