――はるかな尾瀬散策――

（2228ｍ　・　2356ｍ）

日　時	２００４年６月３０日（水）～７月３日（土）　　３泊４日
天　候	３日間とも快晴
コース	◆6月30日（水）京田辺7:00発→鳩待峠17:30着（鳩待山荘泊） ◆7月1日（木）鳩待山荘5:45発→至仏山9:05→山ノ鼻12:20→尾瀬ヶ原→ 見晴十字路16:40着（弥四郎小屋泊） ◆7月2日（金）弥四郎小屋6:10発→燧ケ岳・柴安嵓9:40→俎嵓10:25→ 尾瀬沼14:10着（尾瀬沼ヒュッテ泊） ◆7月3日（土）尾瀬沼ヒュッテ7:10発→沼山峠8:10→沼山駐車場8:20→ 小出ＩＣ13:00→京田辺21:20着
参加者	リーダー：杉本和子　　サブリーダー：大谷典子男性：奥野　岡部　北川　志賀　徳田（誠）　徳田（康）　山口　佐々木女性：伊丹　岸田　沢田　内匠　中村　徳田（カ）　堀尾　　　　　粟岡（一般参加）合計：18名

＜山行報告＞
　戦後の荒廃した日本の心を癒した江間章子作詞の『夏の思い出』が尾瀬ブームのきっかけとなり、多くの人々の憧れの地となった。至仏山・尾瀬ヶ原・燧ケ岳・尾瀬沼と盛り沢山のメニューとなった。
至仏山は、海底の堆積岩が隆起し、その後地下マグマの活動で堆積岩の間から蛇紋岩が貫入上昇してできた山である。対して燧ケ岳は、尾瀬の周囲の火山の噴火による形成後、最後の火山として噴火を繰り返し成長してできた山である。
この時に流れ出た溶岩によってせき止められた川が尾瀬沼に、それ以前に形成されていた古尾瀬ヶ原湖は水深200ｍもあったと推定されている。湖は長い年月を経て、土砂が埋没、水生植物が堆積泥炭化し、湿原になったといわれている。
尾瀬は、池塘、浮島、拠水林や斜面に湿原があったりして実に不思議な地形である。

　また、江戸時代には会津街道として、幕末には官軍と会津藩がこの道を歩いたとある。明治には平野長蔵さんが燧ケ岳の開山のため入山した。明治22年小暮理太郎が尾瀬に入り、現代登山の最初となった。もう110余年になる。この間に尾瀬も「開発か保護か」の大変な時期を迎えたが、人々の努力によって自然は守られている。しかし、訪れる人々による環境破壊は避けられない。ごみ、生活排水、踏み荒らし、移入植物などの対策には自然保護活動が不可欠である。

　尾瀬憲章には「貴重な尾瀬の自然は、先祖から受け継いだ尊い共有財産であって、これを国民の宝として大切に保護し、後世に伝えることは我々の責務である。」と書かれている。
日本人として、誇りを持って守るべき共通の認識とせねばならないと思う。
（報告者：佐々木英夫）

　

　　　　
至仏山を目指す　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　霧に霞む至仏山　　　　　　　　　　　　　　　　　　至仏山頂上手前の蛇紋岩を行く

＜感想①＞
　7月1日早朝、鳩待山荘を出発。山荘のすぐ目の前が至仏山でいきないり登山口に入る。昨夕激しい雨が降ったが、今朝はすっきりと晴れて気持ちが良い。快適な道が続く。道端の花も数は少ないものの、種類が豊富で楽しい登りである。至仏山頂上からの展望は素晴らしい。眼下北東に尾瀬ヶ原が広がり、その先に燧ケ岳が立ちはだかる。まさに一目千両、この景色を見ただけでおつりがくるというものだ。デジカメでは無理だ。私の目は広角レンズ。しっかりと脳裏に焼き付けておくことにする。

　下りの道は見通しが良い。登りより楽しそうに思えた。これがくせもので蛇紋岩（蛇の皮のような模様をした超塩基性岩で装飾品になる美しい岩もある）は表面が滑らかで濡れた岩は滑り易いことがすぐにわかった。
下り始めて間もなくの事、私の前を歩いていた中村さんが、足を滑らせゆらりと前に倒れこみ、先頭を歩いていた杉本さんに接触。二人は折り重なるように倒れた。すぐに二人を助け起こしたが、杉本さんがなかなか立ち上がれない。捻挫かもしれない不安がよぎる。どうなるかと心配したが、二人とも自力で下山された。
憧れの尾瀬ヶ原は広々としてさすがに美しい湿原であったが、時期が悪かったのか、花は意外に少なかった。

　7月2日燧ケ岳に登る予定であったが、Ｂ班の尾瀬湖畔を巡るコースに変更した。湖畔の道は人影も少ないうえ、爽やかな風が吹き、絵のような美しさであった。杉本さんには花の解説をしてもらいありがたかった。鶯の囀りも心地よい。湖面に水鳥が一羽、悠然と浮かび、反対の湿原にはワタスゲの群落が眩しい。桃源郷に遊ぶとはこのことかと思う。
尾瀬沼ヒュッテに9時半到着。予定したよりずい分早い。ヒュッテに荷物を預け、もう一度尾瀬沼の反対側を散策。三平下の尾瀬沼山荘の手前に木製のベンチがあり一休み。
真正面に燧ケ岳が見える。すっきりした山容が美しい。小半時、心ゆくまで燧ケ岳を愛でた。
（徳田　誠）

　　
快晴の至仏山頂　　　　　　　　　　　　　　　　　　滑りやすく急勾配の蛇紋岩を下る　　　　　　　　　　　　　　植生探査ラジコンヘリと記念撮影

＜感想②＞
　25年前、家族で尾瀬沼だけ行ったことがある。燧ケ岳と対峙する至仏山を加えてその間に広大な湿原を抱く尾瀬山域を数日間かけて、どっぷりと歩きまわってみたいと思っていた。「やや健脚向き」とあったが、気力と情熱で行くのだ。
7月1日、5時ごろ目覚めると朝もやの中で尾瀬の匂いを肌で感じた。元気に出発。至仏山の頂が雲の切れ目から見え隠れたり。幸先が良いことを感じた。よく整備された木道と階段を登り、樹林帯を抜け小至仏山に着く。
北東に尾瀬ヶ原と燧ケ岳、会津駒ケ岳、左に景鶴山。南には武尊山も、西には奥利根源流の一つ奈良俣ダムと湖も俯瞰する。至仏本峰へはもう少し。益々展望の良い稜線歩きだ。しかし、蛇紋岩の露岩は滑りやすく景色にも足元にも気を赦せない。岩塊帯を登りきって頂上に立つ。思わず両手を上げてステッキを振り上げ大声で「バンザイ！」と叫んだ。

　本日解禁になったばかりの山ノ鼻への下山道も滑りやすい。こんなところで脚がまた故障すれば大変だ。ステッキは素晴らしい相棒だ。森林限界に近づくと水場があった。疲れた身体にはこの冷たい水は甘く感じた。どんどん下りきると水平道となり尾瀬植物研究見本園に出た。山ノ鼻休憩所で昼食後、尾瀬ヶ原を縦走する。
午前の悪戦苦闘とは違い、水平歩道の木道を軽やかに進む。無数の池塘を縫うように木道はのびる。もう水芭蕉が咲き終わり、ニッコウキスゲはまだ咲かない。２０日間緑の間隙期間だ。入山者もすくない。
しかし、ヒオウギアヤメ、エゾリンドウ、ワタスゲ、レンゲツツジ、ヒメシャクナゲ、ヒツジグサ、モウセンゴケなど咲き誇り、流れる川には魚影が動き、鳥は囀る。空気は旨いし、天気も良い。こんな素晴らしい楽園だから皆んな笑顔を零す。ヤマドリゼンマイの若々しい緑のイエロー・グリーンの中でツツジのヴァーミリオン・ヒューがよく映える。ハッチョウトンボが赤く可愛い。

　7月2日、燧ケ岳を登る。登山道の名は『見晴新道』なのに眺望がない。黒木の樹林帯でぬかるみが続く。しかし、杉や桧の少ない北部寒冷地方樹林の中はエキゾチックでロマンを感じて楽しい。3時間余りでハイマツ帯に出て、岩稜帯に達する。程なくピーク群の最高峰・柴安嵓に着いた。再び素晴らしい展望にありついた。
眼下には尾瀬沼が十和田湖のような形で見える。昨日の至仏山を尾瀬ヶ原を従えて東から望む。長時間の登高の末に至った頂上で、もっと時間をとれば良いのに次のピークをめざし昼食の場とした。
みんなで持ち寄った食料やお菓子、果物で満腹だ。山からの眺望もこれで終わり。
ぬかるみと湿原の険しい足場の悪い下り坂だが、登りよりはるかに楽しい。誇らしく咲くキヌガサソウを見て尾瀬沼畔に着いた。不思議なことに至仏山よりらくらく登頂できた。
（北川欽造）

　　　　
ワタスゲがゆらぐ尾瀬ヶ原　　　　　　　　　　　　　　点在する池塘・浮島　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　燧ケ岳山頂（柴安嵓）

佐々木英夫

木々の歌い、風の誘い、鳥のさえずりて、ものみな歓喜の天上。
眼下の尾瀬を望めば、清暉湿原の池塘に遊ぶ。

天上の至福はいつも歓喜の繰り返し。
天上の歓喜は安らぎのゆりかご。

湿原は悠久の贈り物。
柔らかな陽光の中、ありとあらゆる草花の息づきが麗しく地上に乱舞する。

風の調べに囁きて、自らが荘厳な旋律を抱きつつ、この地の楽園に花を咲かせ、
万物と共生する。

　　　　
燧ケ岳（俎嵓）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山頂から見下ろす尾瀬沼　　　　　　　　　　　　　　　　見惚れる尾瀬沼と燧ケ岳の姿